はじめに
別海町議会議員の小椋哲也です。本稿から全5回にわたり、私が議員業務にAIをどう組み込んでいるか、どんな考え方でそれを運用しているかをお伝えしていきます。
この第1回では、理屈よりもまず、私自身がAIと出会い、付き合い方を模索してきた体験をそのままお話しします。議員がAIを使うというと、まだ違和感を持たれる方もいらっしゃるでしょう。しかし使ってみて初めて見えてきたことがたくさんありました。その一端を共有したく思います。
技術的な枠組みの話は次回以降にまわし、今回はあくまで「一人の議員がどうAIと出会い、何に驚き、何に戸惑い、どこで確信に至ったか」を軸に書いていきます。
ChatGPT との出会い ― 最初の衝撃
私がChatGPTに初めて触れたときの感覚は、率直にいって衝撃でした。検索エンジンに言葉を投げるのとは明らかに違う。こちらの問いかけに対して「文章で」返してくる。しかも、こちらが何を聞きたかったのか、意図を汲み取ろうとしている気配がある。この距離の近さは、これまでのコンピューターとの関わり方とはまったく異質なものでした。
最初は検索アシスタントのように使っていました。わからない言葉の意味を聞いたり、概念の整理を頼んだり。やがて、作文のパートナーとして使うようになります。文章のたたき台をつくる、言い換えの候補を出してもらう、構成を整える。返ってきた答えをそのまま使うわけではありませんが、自分の考えを前に進めてくれる相棒になっていきました。
Gemini、DeepSeek ― AIごとの「性格」を知る
ChatGPTだけを使っていた頃は、AIというものはひとつの大きな存在のように感じていました。ところが、GeminiやDeepSeekといった他社のサービスを触るうちに印象が変わってきます。AIごとに回答のクセがあり、得意不得意があり、言ってしまえば「性格」のようなものがあるのです。
同時に、この頃から私はAIのリスクも体感するようになります。自信満々に間違った答えを返してくる、いわゆるハルシネーション(もっともらしい嘘)です。議員として情報を扱う以上、これは軽視できない問題でした。正確でない情報を拡散するわけにはいかない。便利さの裏側にある危うさをどう制御するか、という課題が立ち上がってきたのです。
NotebookLM ― ハルシネーション問題への光明
その後、Googleが提供するNotebookLMというサービスに触れて、考え方が一段変わりました。NotebookLMは、自分で与えた資料の中からしか回答を組み立てない仕組みでした。つまり、答えの材料の出所が明確で、根拠を追いかけられる。これは議員業務と極めて相性がよいと感じました。
議員が扱う情報は、条例、議事録、統計、白書、議員必携など、公開されたものが大半です。公開情報を材料としてAIに渡し、そのなかだけで答えさせる。出所が追える形で答えが返ってくる。ハルシネーション問題への一つの解を、私はここで見たように思いました。
ただ、NotebookLM単体でできることには限界もありました。いくつもの作業工程を組み立てる、繰り返しの業務を自動化する、複雑なルールを覚えさせる ― そうしたことまで踏み込もうとすると、汎用のチャットツール一つでは足りなくなっていきます。
半年の試行錯誤
そこから約半年、私はさまざまな組み合わせを試しました。どのAIを使えば何ができるのか、どのように情報を渡せば思い通りの答えが返ってくるのか、どこまで自動化できて、どこは人間が手を入れるべきなのか。
この時期は、手応えと挫折が入り混じっていました。うまくいくケースも増える一方で、期待したアウトプットに届かない場面も同じくらい多かった。議員業務に本格的に組み込むには、もう一段別の仕組みが要る ― そう感じていました。
Claude Code との出会い ― 確信に変わった瞬間

転機となったのはClaude Codeでした。Claude Codeは、私の手元の資料を読み、必要なコマンドを動かし、ファイルを書き、工程ごとに役割を分担して動いてくれるエージェント型のAIです。単独のチャット相手ではなく、手順を持った「働き手」として振る舞ってくれる存在でした。
ここで、それまでバラバラに感じていた点と点がつながりました。ナレッジ(材料)を整え、ノウハウ(レシピ)を渡し、エージェント(料理人)に任せる。私は発注者として、「何をしたいのか」「誰に届けたいのか」を定める。この構造が、議員業務の実態と驚くほどよく噛み合ったのです。
私はここで確信しました。議員業務とエージェント型AIは、強い相性を持っている。そしてこの構造は議員業務に限らず、「目的を持って何かを成し遂げたい、考える工程のある仕事」全般に通じるものがあると。
議員がAIを使うことへの誤解について
連載を始めるにあたり、念のため先に触れておきたいことがあります。「議員がAIを使うのは不適切ではないか」という懸念の声への応答です。
私の考えはこうです。議員の仕事のうち、「判断そのもの」は議員の志と良識にしか委ねられません。そこはAIの仕事ではない。一方で、「判断を支える準備作業」 ― 資料の整理、論点の洗い出し、文章化、下調べ ― はこれまでも事務方や秘書がサポートしてきた領域です。AIはまさにこの部分で力を発揮します。判断と支援は、切り分けられるのです。
そして、議員業務で扱う情報の多くは公開情報です。AIに渡して扱ってもらうこと自体に、原理的な問題は生じにくい。機微な情報については当然、個別に線を引く必要がありますが、それは従来から続く情報管理の延長で考えられる話です。
「AIを使うと議員の主体性が失われるのではないか」という見方もあります。しかし実際はむしろ逆でした。AIに任せられる作業が増えたことで、「自分は何をしたいのか」「誰に届けたいのか」という志の部分に、以前より時間と意識を向けられるようになったのです。私の感覚では、AIは志のブースターです。
連載の見取り図
第2回からは、本連載の本編として、「材料(ナレッジ)」「レシピ(ノウハウ)」「料理人(エージェント)」という3つの層と、そこに「発注者としての議員」を加えた構造について、具体的にお話ししていきます。
議員の業務とAIは、こう組み合わせるとよい。そのことを順を追って、具体例を添えながら書いていきます。次回以降もお付き合いいただければ幸いです。